ふたたびいわきサイエンスカフェ①
いわきサイエンスカフェは、毎月福島の水産関係者と一般市民が集まって、福島の漁協の未来について、ざっくばらんに話し合う場所。いわき市の水産振興室と東京海洋大学の共同開催で、今回で21回を数えます。
こちらが低い魚たち。事故直後、高い値を示していたシラスは、2011年のうちに100Bq/㎏を下回り、去年もずっとND。相馬双葉漁協に続いて、この9月からいわき市漁協でも漁を行なおうと、準備を進めていました。
軟体動物のイカ、タコは、魚とは体の浸透圧の調節機構が違っていて、まるでスポンジのよう。「汚い海水で揉むと汚く、きれいな海水だときれいに」なる。ずっとNDが続いているということは、それだけ海がきれいになってきた証なのです。
でもって……
今、漁場の海水を調べても「ほとんどの地点」で不検出。
だけど、東京にいると原発から汚染水が漏れて、漁場が汚染されてしまった。それで相馬双葉もいわき市も、操業を断念したんだ……と思い込んでいましたが、実際は違うようなのです。
以下、水産試験場の藤田さんのお話です。
去年の6月から相馬松川浦漁港で、試験操業が始まりました。今年4月からは沖合い底引き網。魚種と漁場を拡大しながら15種に。試験操業が続いていた。今年春のコウナゴ漁も始まって、築地ではいい値段で取引されました。
ところが、7月22日、東電が地下に溜まった汚染水が原発の港湾内に漏洩していることを認めました。このニュースで今まで流通していたもの、これから獲ろうとしていたシラスについて、数値の上で安全性が覆ったり、問題が発生したということは、データ上は一切ないですし、海水についても、発表前後で何ら変わらない。
東電の地下水の汚染水漏洩がいつから続いていたのか、実はよくわからない。学者によっては、事故当初から続いていたのではという意見もある。量や濃度はわからないですが、おそらくそうだと考えるのが妥当だと、個人的には思っています。
にもかかわらず、海水の濃度は下がって、魚もきれいになってきた。
ところが、このニュースの直後に相馬双葉の魚が、名古屋の市場で受け入れられなくなった。汚染水が300t漏れた。海に達した可能性がある。それが実際に何を引き起こしたか、評価がまったくできていない。
相馬双葉漁協の方が、あるいは仲買の方が、この風評の中、その都度安全を確認しながら、売り先を見つけて、やっとここまできたのに、操業は一時中止。
これはまったくいわれのない風評だと考えます。
ここで相馬双葉漁協もいわき市漁協も、一時様子を見ることになると、それが自ら風評につながってしまうのではないかと。
これまで流通してきたもの、これから流通しようとしているものの安全性について、データ的には何ら変わらないのに、今、ここで止めてしまったら、次の再開のきっかけを、何に求めるのか。やっとここまで来たものが、途切れてしまって、次、大丈夫なのか? そこが一番心配です。
先日、漁業復興委員会で、東京海洋大学の濱田武士先生がいっていました。詳しいデータを見たら、以前と何も変わっていない。
「汚れたのは海や魚介類ではない。報道によって、人の脳みそが汚染されただけ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
私の脳みそも汚染されていたみたい。高濃度の汚染水は東電の港湾内に止まっていて、漁場の海水と魚たちは、元の姿を取り戻そうとしている。それを2年半かけてずっと調査してデータを積み上げた上で、いわき市漁協の漁師さんは、海に出ようとしていた……ってことを、新聞やテレビなどのおっきなメディアは、ちゃんと伝えてこなかった。
「なんでだよー。ここまで来なけりゃ、みんな脳みそ汚れたままじゃん!」
海のお掃除も必要ですが、人の脳みそも除染しないといけない。そんな状況にあるようです。
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