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2013年8月10日 (土)

宮手県のあさひや

東北取材の帰り道、どうしても寄りたいお店がありました。

それは一関市千厩(せんまや)町にある「レストランあさひや」。
岩手県と宮城県のちょうど境目=「宮手県」にあります。
お店はまだ空いてるかな?
8時半近くにやっとたどり着くと、原田良一シェフが迎えてくれました。
この町で35年。ずっとお料理されています。
この店を初めて訪れたのは、震災の年の夏。「専門料理」編集部にお手紙をいただいたのがきっかけでした。
翌年は岩手県北部の洋野町でばったり。「ソウルオブ東北」のキッチンカーで現地に駆けつけていました。「あなたの記事、読んでいますよ」のひと言が、涙が出るほどありがたかったのを憶えています。
Photo
この店に来ると、誰もがそのメニューの豊富さにびっくりします。
ハンバーグに、ビーフシチュー、カツカレーに、オムライス。そしてでっかいエビフライ……洋食なら、食べたいもの何でも出てくる感じ。それでいて、地元の食材をふんだんに使った、フランス料理をフルコースで味わうことだってできちゃうのです。
最初に出てきたのは、コンソメみたいな黄金色のスープ。
Photo_2「これ全部、トマトからとっているんですよ」と奥様が教えてくださいました。
知ってる知ってる、トマトを丹念に漉してエキスだけ取り出すと、こうなるんですよね。赤くないけどちゃんとトマトの味がする。繊細で丁寧なお仕事ぶりが伺えます。
次に出てきたのが…
Photo_3
ビーフシチュー風の、煮込み料理。黄色いのはスクランブルエッグではなく、南部小麦に卵を混ぜて、手で練り込んだパスタの一種。
「そうだ! 岩手は、小麦の産地。南部せんべいもこれでできてるのよねえ」って、思い出したりして。

次に出てきたのは、南三陸町歌津産の穴子のソテーとカレイのフライ。あまりに美味しそうで、写真を撮る前に食べてしまいました。すいません。とにかくここへ来ると畜産の岩手と、水産の宮城。どっちの食材も堪能できるのです。

「あさひや」のある千厩町は、気仙沼市と隣接していて、岩手県でありながら、気仙沼で被災した方たちの、仮設住宅がある場所でもあります。
だから、原田シェフは、岩手と宮城どっちにも跨がる「宮手県」で、避難所や仮設住宅に何度も足を運んで、料理をふるまい、両県のみんなのために奮闘してこられました。
また「あさひや」は、地元の人が、初めてのお子様ランチ、初デート、プロポーズ、お祝い、誕生日、家族の会食……とにかく人生の節目節目にやってきて、家族や友人と大切な時をすごす店でもあります。
「親子4代で来ている人もいますよ。だから私は、ここで店を続けることが、一番の応援なんです」
Photo_4

 

そんなシェフも今年の8月8日に、めでたく還暦を迎えられました。
まだまだお元気なシェフは、地元の高校生にテーブルマナーの講習会を開いたり、仮設住宅へ出向いて、お料理教室を開いたり、「宮手県のシェフ」だから、いつもみんなのそばにいるいるからできること、そばにいなければできないことを、ずっと続けておられます。
(←還暦祝のステッカー)
Photo_5震災後は、復興をめざす地元の人たちに加え、ボランティアで初めて東北にやってきた人も、この店の料理を味わい、シェフから東北の食材のパワーと味わいをいただいています。
「いろんな国の言語が飛び交って、まるで多国籍軍みたいですよ」
還暦を迎えたシェフと一緒に、息子さんも厨房に立って奮闘中。彼で三代目となるこの店の歴史は、まだまだ続きます。
これから現地に行く人も、行けないけど「これから行く」って知り合いがいる人も、今は無理だけどいつか行きたい人も、宮城県と岩手県の境目に、ものすごい種類の食材と、ボリューミーなお料理で、日々東北を元気づけている「あさひや」があることを、憶えていてください。

 

レストランあさひや
岩手県一関市千厩町千厩字宮敷43-8
TEL0191-52-2325
営業時間/11時〜21時
定休日/月曜日(祝日は営業)
http://www.asahiya-iwate.jp

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