ニコちゃんと震災、そしてロックフェス 〜茨城の魚たち①〜
このフライ、何だかわかりますか?
その名も「ニコちゃんナゲット」。お魚のフライです。
3月24日、茨城県ひたちなか市の海浜公園で開かれた、「ひたちなか市里浜元気市」でいただきました。
揚げたてのサクっとした食感は、魚より鶏肉に近いかも。
ジューシーで油との相性もよく、なぜかビールがほしくなる味わい。
ニコちゃんは、コモンカスベとアカエイというエイの仲間の総称。
会場では那珂湊漁協女性部のみなさんが、揚げたてのフライを販売していました。
「なぜニコちゃんっていうんですか?」
「それはね、魚をひっくり返した時、腹側に空いてる空気孔の位置が、まるで笑ってるように見える。だからみんな、ニコちゃんって呼んでいるんです」
そう教えてくれたのは、漁協女性部長の根本経子(きょうこ)さん。
エイって平べったくて目つきがコワい。そんな悪役タイプのイメージが強いので、最初は「ニコちゃん」という呼び名が、ピンときませんでした。
ところが……
↑こちらは、アクアワールド大洗水族館の水槽を泳いでいる、エイの仲間。
ガラス越しに水槽の底から浮上する時、お腹を見せてくれました。
「あっ、ホントだ!ニッコリ笑ってるうぅぅ……みたいで、かわいい(笑)」
目つきは悪いが、いつもお腹で笑ってる。そんな“二重人格!?”な、魚らしい。
いつも港に水揚げされる魚と慣れ親しんでいる、奥さんならではのネーミングです。
根本さんのご主人は、底引き網の漁師さん。ヒラメやカレイ、メバル、アンコウなど、「底魚(そこうお)」と呼ばれる魚たちを水揚げするのが得意です。
「コモンカスベ? アカエイ? 都会では、めったに見かけませんね」
ヒラメやアンコウは高級魚として出回るのに、同じ網にかかるニコちゃんは値がつかず、地元の人が煮付けや唐揚げで味わう程度。都会に出回ることは、めったにありません。
ちゃんと地元の市場に水揚げされて、そこそこおいしいのに、活用されていない魚たちは、未利用魚と呼ばれています。
そんな未利用魚のニコちゃんを、商品化して世に広めよう! こうして3年前、漁協女性部のみなさんは、「ニコちゃんナゲット」を売り出しました。
ニコちゃんナゲットは、春のかつおまつりや秋のさんままつり、そしてイベントでも大人気。
毎年夏、国立ひたち海浜公園で開催される、日本有数の夏のロックフェス「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル」の会場でも、ブースを出して販売。人気者になりました。
那珂湊の漁港には、かつお船やさんま船も水揚げします。
ニコちゃんナゲットに加え、漁協女性部の人たちは、イベントなどに積極的に参加して、さんまの干物やつみれ汁、イカめしなどを販売してきました。
ところが……
「震災で、加工場が被災してしまったのです」
津波は東北3県だけでなく、茨城県沿岸部も襲いました。
漁師さんたちは「家より船だ」と、危険を顧みず沖へ逃れ、船を守りましたが、大事な網などの漁具や、自宅を流されてしまった人も少なくありません。
震災直後、岩手・宮城・福島の漁港に比べると、茨城県の情報は少なく、支援の手も届きにくかった。そう考えると、二重の意味で「被災地」なのかもしれません。
漁協の1階で加工を行なっていた。漁協女性部のみなさん。津波が襲って、加工に必要な機具や多くの中の在庫を失いました。それでも「みんなで元気を出そう!」と、残された材料や設備を使って、加工と販売を再開していたのです。
しかし……
「ニコちゃんから、セシウムが検出されたのです」
たしかに。茨城県沖では水産物のモニタリング調査が、継続的に行なわれていますが、コモンカスベとアカエイからは、他の魚よりも高い数値が検出されています。
那珂湊の海岸部には、魚料理をメインにした民宿がたくさん並んでいます。
特に冬場は地元で獲れる「あんこう鍋」が売り物。
だけど昨年の冬、観光客はめっきり減ってしまい、海辺の民宿街はひっそりとしていました。
今年4月、水産物の放射性物質の基準値が、500bq/㎏から100bq/㎏へ。
操業停止が続く福島県に続き、その影響を最も大きく受けるのは、被災しながら操業を続けている茨城県の漁業者たちだといわれています。
「このまま黙っていたら、風評被害は進むばかり。だからこそ女性部の活動を続けて行きたい」と根本さん。今、使っているのは震災以前に漁獲されたニコちゃんを冷凍保存したものです。
原発事故が起こる前に、材料として仕入れていたニコちゃんは、女性部の大事な宝物。
津波の被害を受け、冷凍庫の電源が落ちてしまった中、根本さんたちは保管場所を求めて2度も別の場所へ移しました。−40℃で再凍結しましたが、「冷凍焼けして使えないかも」……
検査機関で調べた結果。
「大丈夫、冷凍焼けもしていないし、細菌もない。ニコちゃんは、元々冷凍に強いのです。今年もちゃんと使えることがわかりました」
目下、肉に近い食感を生かし、茨城県立海洋高校の生徒たちや、地元の商工会とコラボして「ニコちゃんカレー」を開発中。

そして、今年もまた「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル2012」に参加します。
本番は8月3〜5日、
奥田民生、スピッツ、Chara、木村カエラ、ケツメイシ、サンボマスター……
私が知ってるだけでも、錚々たるメンツが勢ぞろい。
60組以上が参加する、日本のロックの一大イベントです。
http://rijfes.jp/contents/
外国人アーティストは1人もいないこともあり、
地元では「中高生も安心して参加できる夏フェス」として、すっかり定着しているようです。
大事に守ったニコちゃん商品はもちろん、放射性物質が検出されていない、軟体動物のイカやタコ、貝類を使った加工品も、販売の予定です。
ロック好きのみなさん、
「東北へ行くのは大変だけど、茨城なら」と思ってるそこのあなた……
茨城の漁師の奥さんは、頑張っています!
ロックフェスの会場へ行ったら、ニコちゃんと共に奮闘する、
那珂湊漁協女性部のブースを、訪ねてみてください!






































































